優遇制度で開業・移住 こだわりチーズの「七富チーズ工房」
北海道で酪農を学び、富士宮市の酪農や乳製品の可能性に魅せられた高木さん。
富士宮市への移住を決めた理由や経緯、また起業する方の支援制度である「起業支援金」を受給して起業するまでのお話を伺いました。
株式会社七富乳業 高木宏昭さん
北海道から移住されたという事で、経緯などを教えて下さい。
もともとは愛媛県の生まれで、国語の教師を目指して北海道の大学で教育を学んでいました。
そこで酪農教育というものに出会い、乳製品に囲まれた生活のなかで、自分が美味しいと思うものを他の人にも知ってもらいたいと考えたり、様々な乳製品にふれてヨーグルトやチーズにも興味を持っていくうちに自分のやりたいことが見えてきたと思います。
在学中にアイス製造販売を経て、大学4年の時には既に起業を考えていました。
卒業後は北海道のチーズ工房で加工や販売を学び、さらに富士宮で酪農専門の牧場にも1 年間就職して生乳生産のことも勉強させてもらいました。
起業・移住の決め手について教えてください。
富士宮市を知ったのは、各地を巡って視察をしていた時にたまたま立ち寄った静岡県のレストランのシェフの方に聞いたことがきっかけでした。
富士山のある風景にはもともと魅力を感じていました。静岡県にも何度か視察に来させていただいた中で、富士宮市の酪農や観光の事を知りました。関東に数千件ある牧場の中の上位の酪農家が富士宮に集まって質の高い牛乳を生産されていて、その乳質の良さはとても魅力的でした。
また、富士宮市は県内でも有数の生乳生産の盛んなところで、チーズ作りに欠かせない綺麗な水もあります。なのにお店には地元のチーズをあまり見かけない事や、種類が少ない事に気が付きました。
そこで、雄大な富士山とその麓に年間を通してゆったりと牛が放牧されている風景を伝えたいという思いや、地元の素材を使って、地元の方にも喜ばれるチーズを作りたいと思ったことが決め手となったと感じています。
今回の優遇制度について教えて下さい。
静岡で起業することを決めた後は、静岡商工会議所にある「県よろず支援拠点」に3年程前から相談をしていまして、富士市のお菓子屋さんや地元の銀行など色々ご紹介していただきました。
また、起業にあたって色々相談に乗っていただいた酪農家さんの牧場のある富士宮市の下条を拠点としたいと考えていたので、チーズ工房の場所の選定も、富士宮市の市役所と相談して進めていました。その時に、市から起業を支援する「起業支援金」のお話を伺って、申請を進めてもらい、県の産業振興財団に書類を送ってプレゼンを行いました。
新型コロナウイルスの影響で、緊急事態宣言発令中に支援金の審査が通るか不安はありましたが、無事通過。支援を受けて2021年の1月にプレオープンという形でチーズ工房をスタートさせました。
移住してみて感じたこと
ずっと計画してきていたとはいえ、移住に際しては当然不安もありました。
まだお店も営業しながら準備している段階なので、一人で製造・販売・事務作業までやっています。そのため夜遅くまで仕事をしたりお店に寝泊まりすることもあるのですが、そんな時にご近所の方々から差し入れをいただいたり、言葉をかけていただけると本当にここに移住してきてよかったと感じます。
さりげないサポートに地域性の良さを感じて、本当にありがたいなぁと思います。また、先輩移住者である「あおぞらピッツァ」さんと商品をコラボレーションさせてもらったり、新聞やテレビなどメディアの方にも取り上げていただいて、経歴や起業の想いに共感してくれた方がお店に来てくれたりもしました。
富士宮市は食の魅力、素地もそうですけど、地域性もとても魅力的だと思います。
富士宮市に移住を考えている方へのメッセージ
富士宮市は、農業、観光、自然や人間が暮らすための街の機能がコンパクトにまとまっている街だと思います。そのおかげでとても住みやすく感じます。また、水も綺麗だし富士山の恵みも豊かなので、有機農家さんも多く、起業して何か始めるにしても独自色が出しやすい環境でもあります。
不安はどうしてもあるかと思いますが、市役所の方や近隣の皆様をはじめ、力になってくれる方がたくさんいらっしゃいますので、チャレンジできる条件や環境がそろっていると思います。実際私以外にも移住と起業を両方成立させている方が多いこともそれを裏付けていますしね。
七富チーズ工房について
富士宮市の良質な牛からとれる質の高い牛乳から作ったモッツァレラチーズをメインに、ボッコンチーニなど食べやすいチーズを取り扱っている週末限定の「七富チーズ工房」。
普段は地元飲食店向けに佐野牧場の生乳を使ったチーズを取り扱っており、移動ピザ販売の「あおぞらピッツァ」とのコラボピザ「宮(ミャ)ルゲリータ」など、商品や素材に合うチーズの開発も行っています。地元のわさび醤油や大葉を組み合わせると、日本酒にも合うことも特徴の一つです。
ちなみに名前の由来は高木さんご自身が一家の「七」代目であることと、富士山の「富」の2文字を使用したとのこと。
店舗も現在はプレオープンですが、令和3年度中にはグランドオープンも予定しています。